こちらの建物には二箇所の勝手口ドアが付いていましたが、設置場所が風の回廊となっていて、強風時にはドアがバタつき、丁番やストライク・ラッチが悲鳴を上げる程でした。
これまでは調整や修理・部品交換でしのいできましたが、流石に今回はもう青色吐息の状態で、本体取替の提案一択のみでした。”今まで相当しんどかったでしょうに、今日までよく持ちこたえてくれました。どうかゆっくりと休んで下さい”と鎮魂歌でお別れを告げました。
壁をイジると補修に手間・暇がかかるので、取替にはカバー工法を提案し、採用して頂きました。
カバー工法は、文字通り既存の枠を取り外す事なく、包んで覆いかぶせる工法です。判断基準としては、取り付ける躯体自体が健全で、外壁の意匠性を変える必要が無ければ、カバー工法は適した工法と云えるでしょう。躯体を信頼できなかったり、外壁をやり替えるのであれば、迷う事なく枠ごと撤去して取替えるべきです。
ケースバイケースで、歯に衣着せぬ物言いは無用な軋轢を生みますし、公表しなかったが為に事実隠蔽と手厳しく叩かれてしまう企業もあります。なかなか難しいところではありますが、時と場合によるので、慎重な判断が求められます。
工事内容はとても明快で、既存扉本体を取外して戸当りを撤去し、アングルを取付けて扉本体を吊り込みます。建付・ドアクローザーの調整を済ませれば終了です。実際には工事にとりかかる前に養生をしたり、工事終了後には清掃を済ませて養生を撤去するなど多々ありますが、実作業自体はとてもシンプルで、建付や最後の微調整といった所に、施工者の技術力が顕著に現れます。
今回も良い職人さんに恵まれたお陰で、何事もなく、勝手口ドア二箇所の交換を終えることが出来ました。
今回ドアクローザーにはバックチェック機能が優れた製品を採用しました。この機能は強風などで勝手にドアが開くのを防止するもので、この機能が作動すると、制御区間内では油圧の働きによってドアの動きが重くなります。
お客様には引き渡しの際に”完全に風の影響をなくすことは難しいですが、調整も重めにして少しでも影響を緩和出来れば”とご説明したところ、安堵の様子が見てとれたので、ようやく肩の荷が下りたような気がしました。